メディア掲載

 

「地域循環共生圏」の創出に向けて~環境ビジネスへのヒント~(7)

「自律分散型エネルギーシステム」実現の条件 社会的な意義に対する地域住民や企業の共感  

環境新聞 令和2年4月22日版

 我が国政府は、再生可能エネルギーの主力電源化を前提とした自律分散型エネルギーシステムの(以下、「分散型システム」。)整備を目標に掲げているが、その道筋は全く見えていない。固定価格買取制度(FIT)導入を背景に、急速に普及が進んだ太陽光発電の買取価格は既に12円/kWhにまで下落しており、大幅な反転や利益率向上は見込めない。電気料金に上乗せされ国民から強制的に徴収されている再生可能エネルギー賦課金頼みの普及拡大は、今や限界に直面している。

 また、地域における分散型システムの担い手として参入が急増した新電力も苦境に立たされている。大手電力会社は、火力や原子力等大規模発電所等の安価な電源を保有・運用しており、一般論として新電力は価格面で太刀打ちできない。昨年ベースロード電源市場が整備されたが、取引量は小幅に留まり、取引価格も想定された水準には下がらない。結果、経営難に陥った新電力の撤退事例も増加している。

 すなわち、再生可能エネルギー導入拡大や電力小売市場の活性化は目に見えて停滞しており、地域に根ざした分散型システム実現は「絵に描いた餅」になりかねないのだ。

 こうした中、分散型システム実現に向けた取り組みの一つとして、その担い手をなるシュタットベルケ設立の動きが全国で増加している。シュタットベルケとは、自治体と民間が共同で出資を行い、発電事業を中心に地域課題解決を担う企業体のことである。公的関与は地域住民の信頼につながり、地産地消の電源確保のみならず、地域密着型の課題解決に資する付加価値サービス提供も期待される。ただし、域内で整備した再生可能エネルギーのFIT売電のみを収益源に据えるビジネスモデルはじり貧に陥るリスクが高いため、安定的な電力需給バランス確保を域内で実現することが望ましい。

 そのための仕掛けが、蓄電池と高度なIoT技術を最大限に活用したバーチャルパワープラントの整備である。発電量が不安定な再生可能エネルギーを安定化するには、ネットワーク化された蓄電池の導入が不可欠であり、そのリアルタイム制御等情報管理を行なうシステムが求められる。ただし、電力の需給調整を蓄電池のみに頼ることは現実的でないため、負荷追従運転が可能な廃棄物発電等民間企業とも足並みを揃えた電源構成の多様化が、その前提となる。

 それでも残される課題が、地域単位の配電網整備である。電力システム改革の総仕上げとして、本年4月に発送電事業の法的分離が実現されたが、変電所を含む既存送電システムは実質的に大手電力会社のコントロール下にあり、新規参入は現実的に不可能である。それでも、北海道で発生した大規模停電等を見れば、地域インフラ維持に不可欠な配電網は、可能な限り地域単位で整備・管理することが望ましい。自営線設営には二重投資の非効率性が指摘されるが、公共施設や病院等地域のレジリエンス確保に不可欠な機能確保のコストとしてなら、その必然性が認められるはずである。

 大手電力会社が国内電力需要を満たす発電能力を維持している以上、「量」の勝負は無意味である。分散型システムは、社会的な意義を伴う「質」の勝負に持ち込むことで、地域住民や企業の共感を得ることでその実現が期待できるのだ。 

川田 智子

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