メディア掲載

 

リサイクルビジネスが挑むIoTイノベーション(12)

近未来イノベーションの虚実・・・情報収集の徹底と分析による冷徹な経営判断

環境新聞 3月28日版

 かつて「ユビキタス」という言葉が流行した。「どこでもコンピュータ」の意味であり、現在、実現への期待が高まっている「Society5.0」とほぼ同義である。ただし、当時と比べてIoTやAI等新技術の水準向上は目覚ましく、より高度なレベルで人々の生活や働き方を変革していくことは間違いない。

 一方、一部メディアで喧伝されているように、大多数の人々の仕事が奪われ、機械に代替される世界が近く訪れるという予測は幻想に過ぎない。なぜなら、半導体の計算能力、無線通信の速度や安定性、電力確保など、その前提となる技術的・コスト的な課題が大きすぎるためである。すなわち、世界中で開発途上の全ての先進技術が、そのまま社会実装に至る見込みは全く立っていない。

 本連載の結びにあたり、近未来イノベーションの虚実を検証する。

 リサイクルビジネスが新技術や設備を導入するに際して、まずは要素技術の商用化の「時間軸」を見極める必要がある。例えば半導体について、かつては「ムーアの法則」に則り、集積回路上のトランジスタ数が18か月毎に2倍になるとの前提に未来予測がなされてきた。今やその法則は限界を迎えており、IoT社会に求められる複雑で膨大な情報の高速処理には「量子コンピュータ」向けのチップ開発が不可欠と言われる。未だ研究段階の量子コンピュータ向けチップの実用化・汎用化時期を予測することは事実上不可能であり、例えば中期計画レベルで議論出来る段階にはない。具体的には、「全ての廃棄物収集車両をレベル4の自動運転で操作る世界」を前提としたビジネスモデルの検討に意味はないのである。

 次に、社会実装に向けた「適正な導入コスト」も絶対的な検討要素となる。例えば再生可能エネルギー普及を前提とした「脱炭素社会」は、無尽蔵に発電施設や蓄電池を導入する費用が捻出可能なら、今すぐにでも実現出来る。その事実をもって化石燃料は不要と主張するのは極端に乱暴であり、非現実的な議論である。業界的には、全ての物品にRFIDが貼付され、生産から処理に至る段階まで全ての情報管理が出来ればリサイクルの高度化は確実だが、そのコストを負担する主体は存在しないのだ。

 最後に、技術や設備導入がもたらす「付加価値」である。例えば各種の実証が続くスマートホームでは、スマートフォンを経由して遠隔でエアコン操作や冷蔵庫の中身の確認、施錠等を行うことができるが、その導入に必要なコストに見合う付加価値があるかと問われれば疑問が大きい。技術的には完全に確立されている計量パッカー車が普及していない理由も同じである。

 社会経済動向が激変する中、イノベーション導入を否定する企業に未来はない。ただし、少なくとも事業会社の立場でIoT技術や設備を導入する際は、以上3点のバランスを見極めた上で、近未来の虚実を見極めることが不可欠となる。IoTイノベーションに挑む経営判断に求められるのは、先端技術に係る徹底した情報収集と本質を見極める分析を踏まえた冷徹な経営判断に尽きるのである。 (この項終わり)

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